昔の職場仲間との楽しい時間が過ぎ、出勤ラッシュの潜り抜け地元の駅についてもどこも開いていない。空腹が口までも汚染していて某ファミレスへ立ち寄る。
「喫煙席で」
通された席をさーっと目を通すと以前働いていた男の背後に似た男がいた。
確信は無かったのだが確立はきわめて高いと思い込み被っていたキャップが外せなかった。
オール明けで肌はぼろぼろだろうし決定的なのがあたしは彼に行為を持っていたからだ。
勝手に緊張してしまいショルダーバックも肩に掛けたままメニューを流し見をしていたら店員が親切にそそくさと注文を取りに来てしまってとっさに注文を声に出して言ってしまった。
特に食べたくもない生ハムのサラダとキウイのドリンク。
合わせて座ってしまった自分を責めながら紛らわせにスケッチブックと手帳を取り出し考え込んだ。
実際睡眠がとれてない所為もあったが、何より正面にいる確信もない彼に気を取られ頭は掻き乱されていた。
声も彼の声に良く似ていた。
連れは女らしく会話が聞こえる。
集中できずいつの間にか料理が運ばれていた。
口にしたサラダの味はやはり良くわからなかった。
そうこうしている間に入り込んできて次回の出展する案を練り始めた頃に彼を少しだけ伺った。
煙草を吸っているのしかわからなかった。
それと学生は卒業して社会人の筈なのに参考書らしきものを広げている。
普通に考えればレポートに煮詰まった大学生がファミレスでレポートを仕上げている図だた。
構成に夢中になっていると彼は席を立ち会計へと向かっていった。
勘違いかわからないが独りのようだった。
完全に去ったのを確認すると残りのキウイを飲み干して私も会計を急いだ。
自宅の方向が幸いにも同じだったのでどこかで期待をして急いで追った。
角を曲がるとファミレスで見かけた赤みのチェックのシャツを着た男が自転車の鍵を外そうとしている。
とっさに携帯電話を取り出して友達に電話をかけた。
近づいていき顔をあげる。
彼ではなく似ても似つかない男がいた。
ファミレスのあの少し意識していそうな男はなんだったんだろうか。
其れより、私のあの意識をすり削った時間はなんだったのだろうか。
とたんに力が抜けたと同時に、虚しい思いが支配していった。
こんなこと如きに振り回されていた私は愚かだ。
客観視してみれば可愛らしい少女の様だがそんなことは関係ない。
空虚感と睡眠が欲しがっている脳のせいでやるせなかった。
あの空間から届いた彼に似た話し方や声帯はあたしの望んだ幻だったのだろうか。
真相はあやふやにしていよう。
勘違いなのだろうけれども、時や記憶、思い込みの力が此処まで強いのかと驚くと言うより、厄介な機能だと嘆きたい。